「だったら、今すぐ葛城が営業出来ないようにしてやる」
「どうしてっ……」
芳人は驚きを隠せない。
そんなにも人を貶めたいほど、彼は自分を忌み嫌うのだろうか。
隆成は鼻を鳴らした。
「なら聞くが、どうしてあんたは俺に逆らう? 悪い話じゃないはずだぜ。それに、一度は寝た仲だ。あんたも善い思いをした。これが二度、三度となったところで、構う事はないだろうが」
それは、今の芳人には、聞くに堪えない侮辱だった。
「……馬鹿にするな」
隆成を真っ直ぐ睨み、芳人は憤りもあらわに吐き捨てる。
人を陵辱したくせに、この上、さらに関係継続を仄めかす彼が腹立たしい。
喜んで寝たとでもいうのだろうか。
彼の事は、顔を見るのでさえ、嫌で堪らないというのに。
「この際だからはっきり言っておく」
男を毅然と見上げ、声音も凛と言った。
「俺はお前が……大嫌いだ。顔も見たくない。だから、こんな事は……金輪際ご免だ」
それは、十年間、いつも心のどこかに抱えてきた感情。
いくら葛城のためとはいえ、この気持ちを捻じ曲げてまで彼に従う事は出来ない。
すると、隆成はにやつく笑みを消し、双眸を剣呑に眇めた。
「もう一度、自分の置かれた立場を、よく考えろよ?」
「な、に……」
「嫌い大いに結構。俺だって同じだ。昔からあんたはいけすかなかった。だが、あんたは俺に好き嫌いを言える立場じゃないだろう?
俺は葛城を潰すと言ってんだぜ?」
「そうだとしても、お前とだけはもう二度と……嫌だ」
「葛城を潰していいと言うんだな?」
「そうじゃない。だけど……お前には頼らない。お前に頼らなくても葛城が生き残る方法を、探す」
方法は何もないが。
芳人は自分の意思──隆成を嫌いだという気持ち──を偽りたくなかった。
それほど彼が嫌いだから。
もう二度と、こんな惨めな思いはしたくないから。
媚びる事がどれだけ得策か分かっても、彼の望む通りには決してなるまいと、心に強く思うが。
「そんな事、させるかよ」
低く感情のこもらない声で、隆成が言った。
言いながら、指を尻から抜き、芳人の両脚の間に身体を捩じ込ませる。
いやな予感がして、芳人は視線を滑らせた。
そして、目の当たりにする正体に、息を呑んだ。
「ッ……」
そこには、つい先ほど爆ぜたはずの男根が鎌首もあらわに聳え、今まさに秘部を屠ろうとしている。
「やめろっ……」
芳人は拒絶するが。
隆成は芳人の両脚を持ち上げると、身体を進めてくる。
「確かに、あんたに心酔する人間は多い。一度くらい寝てやれば、援助を買って出るヤツは大勢いるはずだ。だがな、俺はせっかく手に入れた獲物を、他人に譲るつもりは無い」
「お前は、人を何だと……」
「言ったよな? シナリオがあったと。それなりに手間かけてんだ。その分キッチリ、遊ばせてもらおうか」
「勝手を言うな、もう二度と、お前とは嫌だと言ったはず……、あっ、やっ、入れるな、やだっ……」
言葉と行為に戦慄しても、彼が退く事は無い。
ついさっき凌辱された場所に、熱い切っ先があてがわれた。
凶器のようなそれは、当然のように埋め込まれてくる。
柔らかい皮膚を押し広げ、未だ痺れを残す内壁を擦って、男が身体の中に入ってくる。
「や、あ……」
またしても肉塊を根元までぎっちり咥え込まされ、芳人は秀麗な顔を歪ませる。
ひどいと思った。
嫌だと言っているのに。
許した覚えなどないのに。
むしろ、嫌いだと、嘘偽りない本心を伝えたはずなのに──。
「どうしてこんな事……」
嫌悪と、憤りと、深い戸惑いに胸塞がれながら、芳人は隆成に問いかける。
隆成はひどく冷淡な表情を浮かべ、言った。
「俺もあんたが、嫌いだからだ」
◇◇◇
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