芳人





「中が痙攣してるぜ」

尻に男根を埋め込んだまま、隆成が薄く笑った。
腸の収縮を通じて、どういう状態か察するのだろう。

芳人は全身が羞恥に火照るのを、感じずにいられない。
だけど、それを知られたくはなかった。
謀略の挙句、人を貶める男に、これ以上わずかな弱みも晒したくないから。

「済んだのなら、どけよ……」

軽蔑の視線もあらわに、芳人は彼を睨む。
一刻も早く、ここから立ち去りたかった。
今は葛城や経営状態の事も忘れ、この数時間の痕跡を消し去りたい。
大嫌いな男に抱かれたという事実を、全て忘れ去ってしまいたいのに。

隆成は余裕たっぷり芳人を見下ろすと、フンと鼻を鳴らした。

「ずい分善さそうだったくせに、今さらつれない事言うなよ。ケツもイッたんだろ? 少しは可愛くして見せたらどうだ」

ズルリと男根を引き抜き、隆成は芳人をからかうように覗き込む。
そうしながら手を伸ばして、たった今まで男を飲み込んでいた芳人の尻穴を、無遠慮に触れる。

「やっ……」

ぬるりとそこを悪戯され、芳人は血相をかえた。
彼は目を細め、ニヤリと笑った。

「あんたはここで感じたんだよ。初めてとは思えないくらい、いい味してたぜ? ほら、まだ柔らかい」
「触るなっ、この恥知らず、こんな事……もう許さない」

またしても不埒な行為を仕掛けてくる男が憎らしい。
いくら感じたとはいえ、彼に身体を許した覚えなど、全く無いのに。

隆成は指を穴にゆっくり埋めると、内壁の浅い部分をくにくに……と擦った。

「ッ……」
「許さない、ねぇ。言っとくが、あんたは俺が買ったも同然なんだぜ? それをどの口が言うんだか」
「お前に買われた覚えなんか無い。卑怯なやり方で嫌がらせしたくせに、ッ、いい気になるな」
「なるほど。つまり、あんたは葛城がこのまま倒産してもいいと言う訳だ」
「な……」

脅迫じみた言葉だった。
隆成は指の侵入を徐々に深め、鷹揚に言った。

「葛城を生かすも殺すも、俺の腹一つなんだよ。あんたの出方次第で葛城の経営を助けてやってもいい。一流店にしてやる。逆もありだ。あんたは葛城を潰したいなんて、思っちゃいないだろう?」
「……当たり前だ」
「だったら、どうすれば良いか、分かるよな?」
「どうすれば、良いか……?」

反芻しながら、芳人は隆成から言われた言葉を、思い出さずにいられない。
報酬に自分を寄越せと言った彼の言葉を──。

だけど、それは承服出来ない事だ。
彼はむかつくからという理由だけで、これからも自分を性的に貶めたいのだろうが。
憎しみすら感じる相手に、どうしてそんな事を許せるだろう。

「さっきお前が言った事なら……お断りだ」

冷やかに言い、芳人は身体を捩じる。
腕の戒めを解いて欲しかった。
早くこの場から解放して欲しい。
何より、未だ彼に身体を弄られる状況から、逃げたくてたまらない。

隆成は指をいやらしく動かし、狡猾そうに笑った。



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