「お前が、好きだ」
言葉にした途端、甘酸っぱい気持ちが込み上げた。
隆成が嬉しそうな顔をして、よく出来ましたというように芳人に軽くキスをする。
「俺はもっと好きだけどな」と言って、今度は細い顎を掴み、果実を思わせる唇に己のそれをしっかり重ねて、互いが溶け合うような深い唇付けを落としていく。
息も付けないほど貪られて、芳人は男を抱きしめた。
想われるのが、想いが通じ合うのが嬉しくて、心が甘い気持ちに染められていくようで……そして、彼を沢山感じたくて。
だから、唇が離れると、はにかみ交じりに囁いた。
「もっと……欲しい」
大茶会の最中だ。
我慢しなければと思いつつも、欲しい気持ちが勝って、芳人は隆成に強請る。
気の強さの潜む目を淡く揺らし、溢れそうな恋心を忍ばせて、彼に素直に訴える。
隆成が目を瞠った。
芳人の頬を両手で包み、喜びを噛み締めるように、色気のある笑みを滲ませる。
「言われるまでもねえよ、俺はいつでもあんたが欲しいからな」
そう言うと、華奢な身体を弄って、弄りながらも芳人を器用に脱がしていく。
スーツのジャケットを落とし、ネクタイを解いて、ワイシャツを、スラックスを、すでに兆し始めた欲望を隠す下着すらも──愛撫と共に肌を全て晒され、芳人は身体が淫らに火照るのを感じた。
欲しくて、奪われたいから……。
だけど、脱がされるばかりは物足りなかった。
隆成は渋い色の長着に黒の十徳を着て、いつもと違う着物姿は何気にドキドキするが。
「お前も、脱げよ……」
隆成の熱を直に感じたいから、彼を覆う上質な絹に手を伸ばす。
「俺の裸が見たいのか?」
と、隆成が悪戯っぽく言うのも、何かドキドキして。
だから、前合わせに手をかければ、隆成はにやっと笑って、着物を無造作に脱いでいく。
がっちりとした肩から続く腕と胸板が露わになった。
筋肉の乗った身体は逞しく、厚みは芳人の二倍はありそうだ。
太い上腕も、肉割れの腹筋も、密度のある大腿筋も全て力強そうで、なめし革のような肌は茶室の自然光の下で鈍く光って。
「良い身体、だな」
全裸になった隆成に、思わず芳人は言った。
「見惚れるなよ」
からかうように隆成は言うが、芳人は見惚れずにいられない。
「今だらか言うが、元々外見は嫌いじゃないんだ」
「あ?」
「癪だけど、お前は外見だけは……普段着もスーツもこの着物も、良く似合うと思って」
「何で外見だけなんだよ」
隆成は冗談めかして芳人を畳に縫い付け、ぬけるように白く滑らかな胸許をちゅっと吸う。
「あっ……」
吸われた箇所がじんと痺れ、痺れが放射状に散るようだった。
戯れのような愛撫が、密着する男の肌が心地良いから、芳人は淡く身悶える。
「前は、外見だけだったけど、今は……それだけじゃなくて」
「俺が、全部格好良いだろう?」
「うん、格好良いと、ぁっ、くすぐったい……」
肌を吸う度に白い身体が跳ね、果実のような唇から漏れるのは吐息交じりの甘い声。
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